2009年8月28日金曜日

フランスの日々: 日本色の付いた技術ではもう世界で勝てない

日本の失敗産業と成功産業は間もなく融合する(通信と自動車)」で述べた自動車ネットワークの分野で日本が、通信産業に引き続き無惨に敗北することの無いように、考えていこうと思います。人々が使いこなす技術が世界より先に進んでいる日本も、このままでは世界で負けると断言できます。その理由を以下に見ていこうと思います。

まず、通信産業の敗因は「ガラパゴス化」と名付けられて、技術水準の高い日本発の技術が世界標準で敗北するメカニズムは以下に述べられています。

未来ナビ「ガラパゴス化」する日本
  1. 高度なニーズに基づいた製品・サービスの市場が日本国内に存在する
  2. 一方、海外では、日本国内とは異なる品質や機能要求水準の低い市場が存在する
  3. 日本国内の市場が高い要求に基づいた独自の進化をとげている間に、海外では要求水準の低いレベルで事実上の標準的な仕様が決まり、拡大発展していく
  4. 気がついた時には、日本は世界の動き(世界標準)から大きく取り残されている
標準化組織については、こちらにまとめました→「高度交通システム(ITS)技術のための標準化組織」。

世界に先駆けて市場が拡大する日本の利点

4つに分けられた世界市場で日本の技術が負ける過程ですが、最初の2つは日本の利点とも言えるものです。日本市場は、世界に先駆けて先進技術が導入される土壌があるのです。企業は世界に先駆けて新技術の普及によるノウハウを蓄積できます。さらに日本人は海外の人たちより新技術に対する好奇心が高い点も利点です。

例えば、デジタルカメラや写真メールは日本人が最初に関心を持った技術でした。デジタルカメラはアナログのカメラより画像が荒いと言われる頃にも、その場で写真を確認できるデジカメの利点に興味を持ったわずかな日本人がいたために、生産者はその利益によって開発投資を続けることが出来ました。継続的な投資によって性能が上がったデジタルカメラは世界でも成功しました。フランスは新しいタイプのカメラが古いカメラより画質が荒ければ、誰も買いません。誰もが性能が上がるまで待つはずです。ケータイのカメラも登場した頃はモザイクかと思うほどに画質が荒かったのに、新しいコンセプトに好奇心を持った日本人が買い始めたことによって、開発投資のサイクルが回ったことが普及の要因に挙げられると思います。現在ではフランスのケータイにすらカメラが付いていますが、初期の性能ではフランスの人は誰も買わなかったと思われます。

同じことが高度交通システム(ITS)にも言えます。日本では普及が始まったカーナビも、フランスではほとんど見かけません。日本でカーナビを売っている会社は、フランスでは性能を落とした何世代か前のものを売っているそうです。ユーザが好奇心を持たず、高度化した機能を使いたがらないからでしょう。人々が使いこなす技術が進んでいる日本が世界でなぜ負けるのでしょうか?

外国人は日本の技術が嫌いと知るべし

「嫌い」というのは外国人が日本の技術を憎悪しているという意味ではありません。世界の人は(もし仮に日本の技術に感心したとしても)、日本の技術が嫌いだというように見える行動をとる理由があると言うことです。これには3つの理由があります。

まず、世界の人々は、「世界に最初にビジネスが立ち上がった日本に世界のビジネスのおいしいところを取られたくない」と考えます。これが日本の技術を世界標準技術にしたくないというモチベーションになります。

2つ目の理由は、途上国への応用についてです。米国、欧州は研究者や学生として、途上国からの頭脳を大量に吸い上げています。その研究者たちが自国に帰ったときに導入したい技術は、彼らの慣れ親しんだ米国や、欧州の技術なのです。途上国から欧米へ留学に来た彼らにとっては、日本発の技術が世界で勝利するのは望ましくないことなのです。よって自国に導入する技術は日本の技術にはなりえません。

最後の理由は外国人は日本語のドキュメントを読めないということです。2年ほど前、世界で最も普及しているOSであるTRONをフランス人技術者と話していたときに、こんなことがありました。かれは、TRONを自分のシステムに使おうと思っていたけども、日本語が読めなくて断念したと言っていました。TRONは仕様が世界に公開されたOSなのでそんなことは有り得ないのですが、Webを検索したところ大量の日本語のページがヒットして諦めてしまったのかもしれません。

ちなみにフランス語では「全く意味不明であること」をChinois(中国語)と言ったりします。「C'est Chinois pour moiIt's Chinese for meそれは私には中国語です」は「意味不明です」を意味しています。フランス人にとってスクリーンに出力される中国語は、日本人が文字化けのページを見るような感覚です。当然、フランス人が日本語を見たときの反応も同じようなものでしょう。そんなページが検索に大量にヒットすれば、意味不明な技術というイメージが付くのは避けられません。

次の新技術でもその技術について日本語のページが大量にヒットすれば、日本に有利な技術というイメージは避けがたく、日本の排他的なシステムと取られかねません。当然、世界の人はそんな技術は採用したくないでしょう。以上の3つの理由が外国人が日本発の技術を嫌う理由です。

列島地図を捨て地球大の戦略を、日本語を捨て英語の仕様書を

以上のことを考えると、[2]プローブ情報ネットワーク:日経ビジネスオンラインにある図は非常に良く分かるように書かれている反面、世界で負けることが運命づけられている非常に残念な図です。現場の技術者や決定を下すリーダーの頭の中にこの図がある間は、上に挙げた3つの理由に阻まれて世界では絶対に勝てません。


この図の通りに技術を発想し開発して、首尾よく国内他社に対して技術的主導権を得たとしても、世界に打って出る時には、すでに包囲網が敷かれてしまいます。国内での競争に勝利した後に、海外に打って出ると言う発想自体が、敗北の第一歩と言えます。これからは、戦略を立案する際に、国内市場とともに世界展開でのヴィジョンを示さなければなりません。例えば、欧米の標準と足取りを合わせることや、アジアの国々をまとめて日本発の技術と言った色を消したりする必要があるかもしれません(列島地図を捨て世界大の戦略を)。

また、図に書かれている日本語は英語に改められなければなりません。理由は単純で、世界の人々は日本語を読めないからです。欧米の標準と足取りを合わせたり、アジアの国々をまとめたりするならば、仕様書は英語である必要があります。本気で世界に飛び出すつもりならば、国内市場だけで使われている技術で、日本人技術者通しで仕様書のやり取りをする場合にも、最初から仕様書を英語にするぐらいの徹底ぶりが必要だと思います(日本語を捨てて英語の仕様書を)。

Posted via web from realtime24's posterous

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