2010年8月2日月曜日

「嘘つきの脳の配線は普通じゃない」(USCニュースより) Diabolus

以下、南カリフォルニア大学のニュース記事

「嘘つきの脳の配線は普通じゃない」
Liars' Brains Wired Differently
http://www.usc.edu/uscnews/stories/11655.html

の拙訳。

南カリフォルニア大学(University of Southern California, USC)の、病理的嘘つき(パトロジカル・ライアー、Pathological liar)の研究は、ほとんどの人々に良心の呵責を感じることを可能にさせている脳の領域における構造的差異の最初の証拠を示した。

USC の研究は、習慣的に嘘をつき、だまし、他者を操る人々における、構造的な脳異常の最初の証拠を見出した。従来の研究は、普通の人々が嘘をつくとき、前頭前皮質(ほとんどの人々に良心の呵責を感じ、道徳的な振る舞いを学ぶことを可能にさせている脳の領域)が高活性化することを示していたが、今回の研究は、病理的嘘つきたちの、その脳領域における構造的差異の証拠を提供する最初の研究である。

USC のイェーリン・ヤン氏(Yaling Yang)とエイドリアン・レイン氏(Adrian Raine)による指導の下で行われた研究は、ブリティッシュ・ジャーナル・オヴ・サイカイアトリー(英国精神医学ジャーナル、British Journal of Psychiatry)、の10 月号に出版される。

被験者は、ロサンゼルスの一時雇用リストから抜き出された 108 名のボランティアのサンプルから抽出された。一連の心理学的テストと面接によって、12 名(男性 11 名、女性 1 名)を繰り返し嘘をついてきた経歴をもつ人々のカテゴリーに、16 名(男性 15 名、女性 1 名)を反社会性パーソナリティ障害の兆候を呈しているが、病理的嘘はつかない人々のカテゴリーに、21 名(男性 15 名、女性 6 名)を普通の対照者のカテゴリーに分類した。

「私たちは、職業、犯罪、家庭環境に関する彼らの話における、いくつかの矛盾点などを探しました。」と、USC の心理学教授で、この研究の共著者でもあるレイン氏はいう。

「病理的嘘つきは、常に欺瞞と真実を区別することが出来ず、面接において、自分自身の発言に矛盾が出てきます。彼らは人を操るのが上手で、人々をカモにしていると認めています。彼らは、彼らの行状の観点から、非常にずうずうしいのですが、このことを話すときは非常に冷静です。」

他者を騙したり、偽名を使ってきた経歴をもつことを別にして、習慣的な嘘つきたちは、詐病(訳注1)をする、即ち、病人の利益を得るために嘘をつくことを認めました、とレイン氏はいう。

(訳注1)詐病(さびょう)とは、経済的または社会的な利益の享受などを目的として病気であるかのように偽る詐偽行為のこと。「仮病」より計画的で悪質。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A9%90%E7%97%85

彼らが分類されたあと、研究者たちは、これらのグループの脳の差異を探求するために、核磁気共鳴画像法(Magnetic Resonance Imaging, MRI) を用いた。嘘つきたちは、対照者より、著しく多くの白質をもち、やや少ない灰白質をもっていた、とレイン氏はいう。

具体的には、嘘つきは前頭前皮質の白質が、反社会性パーソナリティ障害の対照者より 25.7%、普通の対照者より 22% の増加があった。嘘つきは前頭前皮質の灰白質が、普通の対照者より 14.2% の減少があった。より多くの白質(脳における配線)は嘘つきに、複雑な詐欺の技術をマスターするのに必要な道具を与えているかもしれない、とレイン氏はいう。「嘘をつくことは多くの労力を必要とします。」と彼はいう。

「それは、ほとんど読心術です。他者の思考習性を理解することが出来る必要があります。また、びくびくしていると思われたくないので、感情を抑制ないし調整しなければいけません。そこには、やるべきことがたくさんあります。真実を押さえ込まなければいけません。」

「私たちの議論では、前頭前皮質により多くのネットーワークがあればあるほど、その人は、嘘をつくことにおいて、より優位に立てるのです。彼らの言語能力はより高くなります。彼らは、ほとんど生まれながらの強みをもってしまっています。」

しかし、普通の人々においては、嘘をつきたい衝動を制御するのに寄与するのは、灰白質(白質によって、つなげられている脳細胞の集まり)である。病理的な嘘つきたちは白質の過剰と灰白質の欠損を有することが、研究によって見出された。これは、彼らが、普通の人々より少ない道徳的制約と組合わさって、嘘をつくための、より多くの道具をもつことを意味する、とレイン氏はいう。

「彼らは嘘をつく能力を獲得してしまっており、私たちが大ぼら吹くときになっている脱抑制(訳注2)状態にはなりません」と彼はいう。

(訳注2)脱抑制(Disinhibition)とは、例えばアルコールや薬物の影響などで、善悪の判断や自分をコントロールすることができなくなってしまった状態のこと。
http://www.weblio.jp/content/%E8%84%B1%E6%8A%91%E5%88%B6
http://www.smile-65.com/articles/datsuyokusei/

「人々が道徳的な意思決定を行うときは、前頭前皮質に頼っています。普通の人々に道徳的意思決定を行うよう頼むと、脳の前部が活性化します。」と彼は説明する。「もし、これらの嘘つきの灰白質が 14% 減少しているならば、それは、彼らが、道徳的問題をより気にしない、道徳的問題を処理することがより出来ないことを意味します。より多くの灰白質を持っていることで、これらの活動を制御できるのです。」

研究者たちは、これらの構造的差異が、全ての嘘つきを説明する、と主張するまでには至らない。「これは構成要素のひとつです。」とレイン氏はいう。「この発見は、他の脳の部位に再現され、拡張される必要があります。他の神経学的プロセスとは何でしょうか?」「このように研究したことは未だかつてありませんでした。それは最初の研究なので、私たちにとって刺激的ですが、私たちは、この発見をもっと充実させなければいけません。」

これらの発見はいずれは臨床診断を行うのに使われ、刑事司法制度やビジネスの世界に応用があるかもしれない、と第一共著者であるヤン氏はいう。「もしこれらの発見が再現され拡張されるならば、様々の分野で長期にわたる意味をもつかもしれません。」と、USC 心理学科の脳と認知科学プログラムにおける博士課程の学生であるヤン氏はいう。「例えば、司法制度においては、警察が、どの被疑者が嘘をついているかを割り出すのを助けることに潜在的に使われるかもしれません。臨床現場に関しては、臨床医が、誰が経済的利得を得るために詐病をし、障害を装っているかを診断するのに役立つかもしれません。」「ビジネスにおいても、どの人物が雇用に適さないかを割り出して採用選考の手助けになるかもしれません。」「しかし、現時点では、直接の実践的な応用はないと強調しなければいけません」と彼女はいう。

彼らの雑誌発表論文では、著者たちは、典型的に嘘をつくのが困難な自閉症の子供たちに関する別の研究が、灰白質/白質比率の逆のパターンを示してきたことに言及している。「自閉症の子供たちが、嘘をつくのが困難であり、また前頭前皮質の白質が少ないという事実は、前頭前皮質の白質が増加していて、簡単に嘘をつける大人と比べて正反対だが補完的なパターンの結果を形成する。」と研究者たちは書いている。「自閉症は複雑な症状であり、嘘つきのモデルとして取り上げることが出来ないにも関わらず、これらの結果は、大人の嘘つきに関する現在の発見とともに、前頭前皮質が嘘をつく能力に中心的に関わっていることを示唆するということに収斂している。」

 

Posted via email from realtime24's posterous

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