2010年5月7日金曜日

グーグルのトップデザイナー辞任の弁:Google's Top Designer Leaving

今日でグーグル出社も最後だ。
グーグル社員になって3年近く。チームを一から立ち上げ、幸い才能に恵まれたデザイナーのチームも雇うことができた。グーグルにビジュアルデザインの原理を導入し、みんなで素晴らしい仕事をしてきた。チームのことは非常に誇りに思う。今後も頑張ってほしい。前途多難だけどね。でも、僕の方はそろそろ次に行く潮時だ。

他の仕事? ある。その話は次回パート2で。だから辞めるために辞めるんじゃないけども、だからと言って辞める理由に甘い砂糖をまぶして誤魔化すつもりもない。僕が最初グーグルに心惹かれたのは、その経営規模さ。何百万人に影響を与える力がある? どこにサインすりゃいいのさ? という調子だったね。あいにく当時の僕には、そこに小さな問題があるとは見通せなかった。

グーグル初のビジュアルデザイナーとして入社した当時、既に会社は創業から7年が経過していた。専門に教育を受けたデザイナー抜きで会社運営する期間として、7年はいくらなんでも長い。無論スタッフにはデザイナーもたくさんいた。でも大体はコンピュータサイエンス(CS)か人間/コンピューター・インターフェース(HCI)出身の人で、位の高い尊敬されるリーダーのポジションにいる人は一人としていなかった。経営陣(or側近)にデザインの原理・原則に精通した人間が一人もいないのだ。遅かれ早かれ会社もデザイン決定の判断材料が尽きてしまう。新しいデザインを決めるたび、非難の声があがる。説得材料がないところに、疑念がしのび込む。 直感は負ける。「これは正しいムーブ(動き)か?」  エンジニアだらけの会社では問題解決もエンジニアリング任せ。決定はいちいち、単純な論理の命題に摩り替わる。

主観は全部剥ぎとってデータだけ見るのよ。データが裏づけている? OK、ローンチよ。 データが逆の結果? だったら画板に戻って一からやり直しよ。―そうこうするうちデータが決定ひとつひとつの妨げとなり、会社は機能麻痺、ひとつとして大胆なデザインの決断は下せなくなっていく。

そう。グーグルのチームは2つのブルーから1つ選ぶこともできない。あの41通りのグラデーションを試してどれがベターか比べてるという話は本当さ。ついこの間もボーダー幅を3か4か5ピクセルかで言い争いになって、そんなに言うなら自分の主張が正しいことを証明しろと言われたさ。こんな環境では、やっていけない。こんな瑣末なデザインの決め事で口論なんて、もううんざりだ。この世界には対処しなくてはならない、もっとエキサイティングなデザインの課題が他にあるのに。

このデータ依存体質のことで、グーグルを責めるつもりはない。僕にはそれで財務に穴が出たとか、ユーザーが減ったとか、具体的証拠を示して、何か悪い結果に結びついたと証明してみせることもできない。

何十億ドルという株主のドルがかかっているのだ。あの会社には、満足させなきゃならないユーザーが世界に何百万人といる。簡単な任務ではない。グーグルには勢いがある。経営陣は非常にうまく転がす道を見つけた。入社した時は、会社のデザインの方向性を変えるのも不可能ではないと思っていた。が、グーグルの方向性は僕が入社するずっと前に固まっていたんだ。グーグルが巨大な空母なら、僕はさしずめ北緯何度か北に進路を向けようと踏ん張る小舟のようなもんさ。

グーグルで働く機会に恵まれたことには感謝している。思ったより沢山のことを学んだ。無料の社食も恋しくなる。たまのマッサージも恋しくなる。講演や舞台で訪れる作家・政治家・セレブも恋しくなる。公開前のクールなトイいじって遊んだこともね。そして何よりあそこで出会った信じられないほど賢く才能のある人たちに会えなくなるのは寂しい。でも、デザイン哲学を生かすも殺すもデータの刃できっちり決まるのだけは捨てても後悔なしだ。

[Doug Bowman "Goodbye Google"]

Posted via web from realtime24's posterous

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