2009年10月28日水曜日

驚きのスクープ カルザイ大統領の実弟はCIAのエージェント (金平茂紀の『NY発・チェンジング・アメリカ』)

眠る前に、あした(10月28日付)のNYタイムズ紙をオンラインでチェックしたら、とんでもないスクープ記事が載っていたので速報しておく。

 アフガニスタンのカルザイ大統領の実弟、アへメド・ワリ・カルザイ氏が、長年にわたってCIAから資金提供を受けている事実が判明した。情報ソースは、現職および過去のアメリカ政府高官である。カルザイ弟氏は、ブッシュ政権の対アフガン戦争以来、アメリカ軍に対して民兵のリクルート活動への協力や、タリバン指導者の居宅をアメリカの特殊部隊やCIAに貸与するなど、積極的に協力している。一方で、カルザイ弟氏は、アヘン等の麻薬取引で巨大な利益をあげており、同国の麻薬取引の中心人物となっている。アメリカ側もその事実を把握しているが、親アメリカ政権のカルザイ大統領のファミリーの一員であり、なおかつ、軍への協力の実績からこれまで目をつぶってきた。ただ、カルザイ弟氏が麻薬取引であげた巨額の利益は、タリバンの資金源にもなっており、アメリカ側にも強い懸念の声が強まってきている。また先の大統領選挙で、投票用紙の偽造やニセ投票所の設営など多くの不正に関与していた疑いももたれている、云々。

 記事中で面白いのは、アフガニスタンで、NYタイムズ紙記者のインタビューを直接受けたカルザイ弟氏が、麻薬取引への関与やCIAからの資金提供の事実をいちおう否定はしていたのだが、金については、兄のカルザイ大統領から「必要経費」として(for"expenses")、定期的な支払いを受けていたことを認めており、なおかつ、その金の出所については知らない、と答えている点だ。つまり、記事はCIAの金が直接カルザイ大統領のもとに渡っていた可能性さえ示唆していることになる。

 政権の腐敗と、アメリカの繰り人形という評価が根強いカルザイ大統領の実弟がCIAの資金提供を受けたエージェントだったというNYタイムズ紙の暴露は、オバマ政権のアフガン戦略の見直し作業にも大きな影響を与える可能性がある。グッチのデザイナーが世界一オシャレと太鼓判を押した民族衣装に身を包み、タリバン政権崩壊後のアフガニスタンに乗り込んできた当時のカルザイ大統領のイメージと、現実の政治のこのあまりもの落差。

 アフガニスタンはオバマ政権にとっては鬼門だ。国内の医療保険改革、国外のアフガン戦争。この2つがオバマ政権の命運を決める最大のファクターだ。

 こうしたアメリカの、そもそもの対アフガン政策の基盤が揺らいでいるなかで、日本の自衛隊によるインド洋上での給油活動を継続しないと、アメリカの機嫌をそこねないか?などという、狭い狭い見地からの発想で、ずるずる前例主義を重ねていくやり方は、もう状況にそぐわないのではないか?

 同様に沖縄の普天間飛行場の移転問題に関しても、「約束を守らない国は信用されない」などという単純なすり替えで問題の本質から目をそらす姿勢もどうなのだろうか。大体、オバマ政権は前のブッシュ政権が諸外国と結んだ「約束ごと」を相当程度、覆している事実があることを忘れていないだろうか。政権が交代すれば、前の政権が結んだ約束ごとを見直す契機が現れるのは、むしろ当然なのではないだろうか。「もっとも厄介なのは日本」とワシントンポストの東京発の記事が出ていたが、こういう記事が出ること自体は何ら不思議なことではない。外交とはそのようなことの連続であったのではないか。

 NYタイムズ紙の見事なスクープ記事をみながら、さまざまな考えが頭をよぎった。

■カルザイ弟の写真(huffingtonpost)

■Brother of Afghan Leader Is Said to Be on C.I.A. Payroll(NY Times)
http://www.nytimes.com/2009/10/28/world/asia/28intel.html

Posted via web from realtime24's posterous

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