2009年8月25日火曜日

マスコミに載らない海外記事: アメリカ暗殺部隊株式会社

wsws.org

2009年8月21日

木曜日のマスコミ報道によると、アメリカ中央情報局(CIA)は、アルカイダ隊員とされる人々に対する、“標的殺害”の秘密計画を、いまや悪名高い民間警備会社ブラックウォーターと契約していた。

本質的に、CIAは、国家による暗殺を、傭兵を雇用している民間企業に外注しよう努力していたのだ。

6月、現在のCIA長官レオン・パネッタが、下院諜報委員会の主要メンバーに、計画の概要を説明し、自分がそれを停止するよう命じたと語った。明らかに、ディック・チェイニー元副大統領の命令の下、暗殺計画の存在は、議会には隠ぺいされていた。パネッタは、中央情報局の長官として、六ヶ月後に初めて知ったと語っていた。

ブラックウオーターの関与についての記事を発表した、ニューヨーク・タイムズによると、取り決めは、決して、契約によって、正式なものとされることはなかった。その代わりに、ブッシュ政権幹部とCIA幹部と、ブラックウォーター創立者でオーナーの、エリック・プリンスの間で、“紳士協定”がまとめられていた。

アメリカ海軍特殊部隊、ネービー・シールズの元隊員であるプリンスの下、ブラックウォーター社(現在はXeサービシズと社名変更)は、傭兵(彼等の大半は、元アメリカ軍の特殊作戦要員)を、イラクとアフガニスタンに、出動させることで、アメリカ政府から何十億ドルも稼いでいた。

イラク民間人に対し、同社工作員が、過剰で、往々にして、根拠のない武力使用を伴った一連の出来事の後に、ブラックウオーターの悪名が高まった。こうしたことが、ついには、ブラックウオーターの殺し屋が、17人の非武装のイラク民間人を殺害した、2007年9月バグダッドのニスール広場乱射事件となったのだ。

この虐殺は、占領しているイラクの法律にも、軍事司法の法規にも縛られずに、全く罰せられることなく、傭兵警備会社が殺人をすることができるという仕組みの、必然的な最終結果だ。これ自体、戦争というものの、略奪的で違法な性格の一つの反映に過ぎない。

プリンスは、共和党右派と、最も親密なコネがある。彼の妹は、ミシガン州共和党の元トップだった。彼は、フォーカス・オン・ザ・ファミリーのような右翼キリスト教原理主義組織に対する、主要出資者である財団の主要人物の一人だ。

こうした共和党とのコネが、ブラックウォーターの成功の鍵だったと、多数の人々が見ているにもかかわらず、ペンタゴンも、国務省も、オバマ政権の下でも、プリンスの会社に契約を発注し続けている。

ニスール広場虐殺のイラク人犠牲者に代わって起こされた、ある訴訟において、二人の元ブラックウオーター社員は、とりわけ、“同社が継続中の犯罪行為について、連邦当局に、情報を提供したか、情報を提供しようとしていた一人、あるいはそれ以上の人を、プリンス氏と彼の従業員が殺害した”と告発する宣誓陳述書を提出した 。二人とも、自分たちの生命が危ういのではと危惧したと語っている。

暗殺計画の下、ブラックウオーターの要員は、“しばしば、拉致をともなう任務のシミュレーション”を行うのに、非常に多くの時間を費やしていたと語った、ある匿名元CIA職員の発言をワシントン・ポストは引用している。

CIAの暗殺計画に、ブラックウォーターが関与していたことが明らかになった結果、一連の疑念が沸き上がる。CIAのパネッタ長官が、二ヶ月以上も前に、この計画について、議会に概略を説明してから、何故アメリカ国民に対して隠ぺいされたままだったのか? パネッタ長官は情報を議会から隠していたのか、それとも、諜報委員会のメンバー達は、ひょっとしたら犯罪的共謀である、この件について知った後も、黙っていたのだろうか?

より根本的に、CIA-ブラックウォーターの不正取引は、アメリカ合州国における、広範囲で、継続的な、デモクラシーの退廃を証明している。

これは、ブッシュ政権が、アメリカの法律や憲法を公然と無視して活動し、暗殺や拷問を、ホワイト・ハウスから指令していた、犯罪的政権であるという証拠の一つだ。

にもかかわらず、誰一人として説明責任を問われていない。オバマ政権は前任者の犯罪行為をかばい、こうした犯罪の中でも最悪の、侵略戦争を継続している。

オバマ ・ホワイトハウスと、民主党優位の議会は、国家の中の国家、軍・諜報複合体による圧力の前に、退却を続けるばかりで、ブッシュ政権の犯罪に対する、いかなる調査も停止しており、まして起訴どころではない。

木曜日、元CIA長官マイケル・ヘイデンが、CIAは、同社の“極めて目立たない技能”を活用する必要があったのだと述べて、決然とブラックウォーターを擁護して、この作戦がまたしても明らかになった。

こうした最新の事実発覚によって、更にはっきりと浮き上がったのは、プリンスのような連中と、軍や諜報機関内部にいる彼の相手方が、驚くべき、責任を問われることのない権力を行使しているという政府の姿だ。

1960年代と1970年代、CIAは、コンゴのパトリス・ルムンバから、キューバのフィデル・カストロに至るまで、諸外国の指導者に対する、一連の暗殺や、暗殺の企てに関与していたことから、“殺人株式会社”というあだ名を獲得した。

しかし、CIA-ブラックウォーターの不正取引で明らかになったのは、一層不気味なことだ。CIAは、共和党と密接なコネを持つ右翼の人物が組織した傭兵で構成される暗殺部隊と契約していたのだ。

イラクとアフガニスタンで、何ら罰せられずに、殺害や拷問をすることが許されていた同じ勢力が、アメリカ合州国内での、支配層エリートの権益や、自由企業制度に異議を申し立てる戦闘的な労働者や、その他の人々に対して向けられるという、本当の危機が存在している。要するに、アメリカ帝国主義が、エルサルバドルから、イラクに至るまで、活用してきた暗殺部隊の暴力が、国内に向けられるのだ。

実際、ブラックウォーターは、高度に訓練された殺し屋を、既に国内作戦で配備したことがある。2005年、自動小銃を持った何百人もの同社の傭兵が、カトリーナに襲われた、ニューオリンズの市街に送り込まれたのだ。

こうした分子の活用は、対国内スパイ活動の継続や、国家の敵に対する、告訴や裁判無しでの、無期限拘留を可能にする“予防拘禁”制度の導入とセットになっている。アメリカにおいて、独裁政治の足場は既に組み立てられている。

この傾向は、オバマ政権の下で、衰えることなく継続している。政策は、階級の権益と、アメリカと世界の資本主義が直面する危機の性格によって、決定されている。アメリカの金融界の上流階級と、勤労者との間のこれまでにない水準の社会的不平等は、デモクラシーとは本来相いれない。

社会の社会主義的変革を目指して戦う自らの政党の下に結集した労働者階級による政治闘争によってのみ、民主的な権利に対する、これらの深刻な脅威に打ち勝ち、政府首脳に、その犯罪の責任を負わせることが可能になるだろう。

Bill Van Auken

記事原文のurl:www.wsws.org/articles/2009/aug2009/pers-a21.shtml

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