——それはさうと大江健三郎自殺未遂といふ噂をききましたが本当でせうか? 彼にはたしかに何か、精神病質の危険な兆候が感じられます。
小生も躁病が極度に達し、つひにステージで歌をうたひました。しかしカーテン・コールで出ると、女の子が一せいにキャーッと云つてくれたので感激しました。あのキャーッといふ声を一度体に受けてみたいと思つてゐたので宿望を達しました。あの声は一体どこから出るのでせうか。
貴兄の躁病の御文章をよんで、大笑ひ、といふのも、医者の病気ほど愉快なものはないからです。御病気悪化の一助にもと、イヂワル・ヂヂイがこの手紙を書きました。匆ゝ
七月十六日 三島由紀夫
北杜夫様三島由紀夫=著
『決定版 三島由紀夫全集38 書簡』(全42巻)
新潮社 2004/03 所収おまえが言うな。
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