▲終戦直後の昭和20年9月20日に発行されたという『最新・日本交通圖』。左は復刻版のパッケージ、右は本体の表紙。 (『最新・日本交通圖』より)私もこれまで見たことのない戦後直後の『最新・日本交通圖』が復刻されました。1945(昭和20)年9月10日印刷、9月20日発行というこの路線図、終戦一ヶ月後のものにも関わらず、なぜかいわゆる“外地”まで収録されており、その意味でも大きな謎を秘めた地図といえましょう。
▲北海道の部。樺太、千島列島も記載されている点に注目。ちなみに道内各線には渡島海岸鉄道、河西鉄道、早来軌道、殖民軌道枝幸線といった私鉄も含まれている。 (『最新・日本交通圖』より)
クリックするとポップアップします。復刻されたのは仙台市にある株式会社セルプランの川村信太郎さん。国立国会図書館にも収蔵されていないこの路線図を、時代を語り継ぐ史料として、そして鉄道史研究の一助として復刻を決断され、このたび解説リーフレットとともに発売されたものです。
▲東京付近図。いわゆる“大東急”時代の東急小田原線、東急井ノ頭(井の頭)線の表記や、私鉄各駅の旧駅名など興味が尽きない。 (『最新・日本交通圖』より)
クリックするとポップアップします。この『最新・日本交通圖』、天地196㎜、左右約1m、20面経折りのハンディなものながら、終戦直後の物資不足の最中に表裏多色刷りで印刷されており、“外地”の記載とともに、なぜこのようなものが作られたのか不思議でなりません。その辺を川村さんは以下のように推理されております。
「終戦時300万人もの日本国民が外地に取り残されました。自分の足と鉄道だけが頼りの時代、これらの人たちを速やかに祖国へ、故郷へ戻すために、また、待ちわびる家族や行方の知れない友人たちと再会を果たすためにも必要な交通図であったと思われます。奥付に記された編集・発行元の「興亜協調會」や軍指定工場と目される「東方美術印刷社」の名称、凡例に残る「要塞地帯」の標記など。本図は終戦処理の一つとしてGHQによる旧軍組織解体までのわずかな期間に取り急ぎ作られたものと推察されることなど、鉄道ファン、地図ファンに限らずたいへん興味深い一帖です」。
▲戦後の発行にも関わらず、いわゆる“外地”が収録されているのが不思議。朝鮮半島と台湾の部。 (『最新・日本交通圖』より)たしかに、いわゆる不要不急路線として廃止もしくは休止されたはずの線区も消されることなく記載されており、1939(昭和14)年頃に初版発行(未発見)されたものに、要塞地帯の消しこみなど最低限の修正を加えて応急的に発行されたものなのかも知れません。
ちなみに“外地”の路線網は、樺太、台湾、朝鮮、満州、中華民国が収録されております。
▲「満州国」の部。南満州鉄道最終期の路線網が手に取るようにわかる。 (『最新・日本交通圖』より)
2009年10月2日金曜日
編集長敬白: 魅力の『最新・日本交通圖』。
via rail.hobidas.com
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