『いじめと不登校』という本を読んでいて、こんな話があった。あるお母さんが、いつもインスタントのカレーばかりだったが、子どもの誕生日かなにかのときに、手作りのカレーライスを食べさせようと思って、心をこめて手作りのカレーライスを作ったところ、子どもが、
「何か今日のは味ないな。いつものは美味いのに」
と言った、というもの。これを読んで思い出したことがある。
俺の母は、弁当に決して冷凍食品を入れない人だった。
ある日、妹が友だちの弁当にシューマイやタコ焼きが入っているのを見て、帰宅してから母に、
「わたしの家も、あんな豪華な弁当のほうが良い」
と言ったそうだ。もう高校生になって寮に入っていた俺に、母はその話を笑いながらしてくれた。
それを聞いて、なるほどと思った。というのも、寮に入って初めて冷凍のハンバーグというものを食べたのだが、口に入れた瞬間に自分が何を食べたのか分からないくらい混乱して、思わずペッと吐きだしてしまったのだ。そこには、「ハンバーグのようなもの」があった。家では何気なく食べていた母のハンバーグだが、実はけっこう美味かったのか、とその時に思い至ったのだった。弁当を作るかどうか、冷凍食品を使うかどうか。
そんなことで親の愛情が決まるわけではない。
しかし、「おふくろの味」というようなものが何か一つでもあるかないか。
そういうことは、ふとした時に心を慰めてくれるような気がする。
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