2011年5月17日、「東電」と「国」が原発事故に関する「工程表」を出しました。
まず、東電の工程表について、私は次のように考えています.
1) 4月に発表した東電の工程表は「燃料が破損して半分ぐらいしか残っていない.原子炉に穴が空いている」という情報を隠したので、工程表自身が不完全だった。
2) 今回は、3号機の原子炉の状態と4号機のプール(使用済み核燃料プールに資料中の核燃料が入っている)のことを隠しているだけになったので、やや事実に近くなった。3号炉は不安定で、4号炉のプールは倒壊する可能性があるから、そのことには触れる必要があった。
3) 多くの専門家の予想は「燃料がメルトダウンしていることが判ったのだから、工程は後ろにずれる」というものだったが、ずれなかった.それは当然で、4月の時点で東電は燃料が破損していることを知っていたのだから、表面上、ウソをついていただけだから、スケジュールは変わらない。
4) 自分たちの責任(東電による福島原発の破壊)で苦しんでいる付近の人たちのことはまったく関心がなく、救おうという計画はまったくない。東電にとっては人の健康や生活より、原発が大事という気持ちが良く表れている工程表だ.
私は、これまで東電の発表を参考にしても、それが「事実」と思ったことはないので(それぐらい、東電という立派な会社はダメな人たちの集まりになった)、4月の時点で東電が「水棺」と言っていたのに、それにはこのブログでは触れていません。
いくら公的な発表でも、私自身が「どうも怪しい」と思ったら、触れないのが情報を提供する側の誠意というものと思います.
しかし、もともと、すでに福島原発は無いも同然なので、今更スケジュールが少し遅れても、なんら影響はありません。
むしろ、多くの人が「まずは原発が落ち着くこと」といっているのは、解決を遅くします.「福島原発など、どうでもよい」と思わないと、「次の行動」に移りにくいからです。
問題は、次の整理する「国」の工程表ですが、東電の工程表に引きずられていることです。
1) 4月には東電は工程表を出したが、国は、経産大臣が「原発の収束を待って」と言った。
2) 今回は工程表を出したので、やっと「東電という会社と、日本国という国がある」というレベルまで来た。これまでは「東電という会社はあるが、日本国という国は無い」という状態だった。
3) 国は国民の健康と生活を守り、国土を回復するのが第一なのに、除染、汚染物質(水、土壌、瓦礫、草木)などの主要は行動が後になっている.
4) 「工程表」なのに、タイムスケジュールが書かれていない.
採点すれば10点ぐらいの工程表と言えますが、その原因は、
「原発を国策として進めているのに、原発の事故を想定していなかった」
ということに尽きます.
今でも日本では50基ばかりの原発が、動くか動く状態なのに、まだ国は腰を上げません。
地震や津波、大雨などはいつ来るか判らないのですから、もし、このまま原発を動かすなら全国の国の力を総動員して、原発周辺(半径100キロ)の国民の被曝回避の計画を作る必要があるでしょう。
今日も国会の委員会の参考人陳述を行いましたが、文科省が1年20ミリの限度を示したために、「少々なら問題ない」というのが定着して、福島を綺麗にするチャンスを逸するのではないかと気が気ではなりません。
(平成23年5月20日 午後2時 執筆)
武田邦彦
2011年5月20日金曜日
武田邦彦 (中部大学): 「工程表」の評価
via takedanet.com
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