2010年11月4日木曜日

消える若者市場:日経ビジネスオンライン

消えた“ブーム”

 大衆消費社会では時折、“ブーム”と呼ばれる圧倒的多数の消費者を巻き込む流行現象が起こる。かつて1990年代には携帯電話が爆発的に売れ、女子高生ブームに浮かれ、「Windows95」や「たまごっち」のために人々は行列をつくった。さらにバブル華やかなりし1980年代までさかのぼれば、DCブランド(デザイナーズブランド、キャラクターズブランド)やイタメシ(イタリア料理)から株式投資に至るまで、あらゆる分野で絶え間なくブームが巻き起こっていた。

 ところが最近は、次のブームがなかなかやってこない。最近のトレンドとして、エコカーやファストファッションもブームと呼べないことはないが、小粒感は否めない。例えて言うならば1980年代の消費の鍋は、何かあればすぐ沸騰するほど熱かった。これに対して近年の消費の鍋は冷え切ってしまい、めったなことでは湯気さえも立たない。

 かつての消費ブームの先頭に立っていたのは、言うまでもなく30歳以下の若者世代だった。しかし現在の消費市場では、若者の存在感が年々希薄になっている。そして若者をターゲットとするビジネスは軒並み低調である。

 今若者たちは消費市場の華やかなステージから、別に後ろ髪を引かれる風でもなく、静かにフェードアウトしようとしている。そして今まで常に消費市場の中心にあった若者市場も、風にあおられた砂上の楼閣のように雲散霧消しようとしているのだ。

 われわれビジネストレンド研究所では、若者市場はただ単に冷えているのではなく、消滅しつつあるという仮説を持っている。その主たる理由は次の3点、若者人口の激減、若者の購買力減退、若者の老成化である。

激減する若者人口

 少子高齢化のトレンドを受け、若者人口は減少している。しかもそのスピードは、「壊滅的」という言葉を用いたくなるほどに急激だ。わが国における20歳代の人口は、1995年には1900万人に迫っていた。それが2015年にはおよそ3分の2の1300万人程度となり、2030年には1100万人程度にまで減少する見通しである。つまりわが国の若者人口は、わずか1世代を経る間に、半数近くにまで激減すると見込まれている。

 これだけ人口が減れば、当然市場も縮小する。また人口構成の点でも、かつて多数派を形成していた若年世代は、もはや完全な少数派に転落してしまった。かつて繁華街や観光地やスポーツ施設などでは、若者たちがあふれていた。だが現在は、どこに行っても目立つのは中高年世代であり、若者の存在感は概して希薄になった。

購買力の衰え

 若者市場が失ったのは、数のパワーだけではない。若者一人ひとりの購買力も、急速に衰えている。国税庁の「民間給与実態統計調査」のデータによると、25〜29歳の勤労者の平均年収は、1997年から2009年の12年間の間に、373万円から328万円へと45万円も減少した。前後の世代を含め、若年世代の所得は1997年以降一貫して右肩下がりだ。

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