2009年8月27日木曜日

ほぼ日刊イトイ新聞 -帰ってきた松本人志まじ頭。第19回 潜在能力への信頼が、お金の本質。

第19回 潜在能力への信頼が、お金の本質。

糸井 ポテンシャルこそが
ものごとの価値のすべてなんだ、
ということにぼくが気づいたのは
赤城山の埋蔵金を調べた時なんですよ。
徳川埋蔵金を掘っていてわかったのは、
江戸幕府がフランスから借金をしたのですが、
フランス側からして見れば、
徳川埋蔵金があろうがなかろうが
日本にお金を必ず貸すという事実がありました。

フランスの銀行に取材をしたら、
当時、現地に金を貸すグループがあって
日本にお金を投資しまくっていたんですよ。
「あれだけの小さな島国で、
 あれだけの多くの働き者がいれば、
 密集していて人数的にも工場としても
 いくらでもものを生産できるだろうし、
 人数としても市場として成り立たせられる」
・・・だから、やっぱり、埋蔵金がなくても、
フランスがお金を貸したんだろうなあ。
それに気づいたら、経済の仕組みを
ぜんぶわかったような気がしたんです。

「働き者がたくさんいさえすれば、
 それは力になって、必ずもとがとれる」

この事実を、フランス人たちは江戸時代に、
とっくに知っていたんだなあと思いました。
噂だけで経済は動くし、早い話が、
ポテンシャルというのが通貨だと感じるし。

末永 それがお金というものの本質です。

例えば南太平洋のヤップ島では、
石がお金ですけど・・・そこの石貨は、
石が大きければ大きいほど価値があります。
みんな、お金を、どこかほかの島から
掘り出してくるらしいんです。

で、ヤップ島いちばんのお金持ちは、
その人の先祖が、ある島からものすごい
大きな石を掘り出してきたからですが、
でも、その祖先は、大きな石を、船で
運んでいる途中に沈没しちゃったんですよね。
でも、その子孫たちは、やっぱり、
村一番のお金持ちでありつづけるそうです。

糸井 いいなあ、その話。
末永 引き上げられる可能性はゼロなのに、
その沈んだ石が、この世にあるものとして
子孫たちの財産として、通用してしまう。
糸井 ヤップ島のお金って、
あんまりでかいから交換しないよね?
末永 ええ。金は動かない。もともと、
不動産はそういう仕組みですから。
糸井 なるほどね。
バブルの時にも、そういう仕組みを
ちゃんと説明してもっていれば、
みんなが、不動産についても
もっといろいろとわかったはずのに、
なんか絶対価値のように誤解しちゃうよね。
末永 そう。
ヤップ島の話は、みんな笑うんだけど、
でもぼくたちは金(きん)を使って
おんなじことをやってたんですよね。
松本 (笑)
末永 一生懸命掘り出した金(きん)を
中央銀行の金庫に入れて、
これと交換できるのが通貨だとしただけで。
糸井 ニクソンが、
「もう、金(きん)に変えなくていいのな!」
と言ったあとに、それがもっと本質的になって。
末永 東洋では早くから紙のお金がありましたが、
ただの紙切れが正統なお金になったというのは、
西欧の歴史では、1971年の金・ドル交換停止が、
はじめてのことなんです。

それまでは、ただの紙切れというのは
戦争なんかで困った時に政府が出すもので、
その後、ものすごいインフレで
紙くずになってしまうようなものだった。

でも、1971年までだって、やっぱり
ほんとうに価値があったのは約束だったんですよね。
石なり金属なりが、約束の裏付けだっただけです。
お金って「約束だけ」なんですよ。
持っている人が、他の人に
何かをさせることができるという。

糸井 「肩たたき券」ですよね。
松本 そうそう(笑)。
糸井 「こいつの肩たたき券は、
 ほんとに叩いてくれるか」
が、約束で。
末永 肩をたたかない奴が罰せられるという仕組みを、
政府が保証してくれているという。
糸井 ぼく、前に、
「100円を捨ててきなさい」
という授業を、やったことがあるんです。
その授業というのは、
俺の職業になりたい人が集まってきているから、
少し乱暴をしてもいいんです。
だから、さっき言った小学生とは
違うことができるんだけど。

「今からみんな、100円を持って外に出て、
 捨ててきて戻ってきて、その感想を述べてね」
と言ったんです。

松本 おもしろいですね。
糸井 うん。
「お金」というものが生む「約束」を
いかに壊してしまうかという瞬間だからね。
で、授業に参加していた子たちでも、
女の子は、みんな快感を感じたんです。

感想を言わせても、基本的には、
「すっごい気持ちよかったです!!」って、
たった100円なのに、イッた目をしてるんですよ。
まあ、もちろんおばさん型の人はいて、
「私にはそんなこと、できませんでした」
という感想だって、あるはあったけど。

それに比べたら男は理屈っぽくて、
「歩道橋の上からトラックの荷台に
 100円を落としたんだけども、
 あれが旅にゆくと思うとおもしろかった」
「公衆電話ボックスのお金の戻り口に
 入れておいたから、誰かが使うんじゃないか」
とか何とか言っている。

ブラックホールに向けて
ものを投げることが、できないんです。

もっとセンスのないひどい奴は、
自動販売機で要らない飲み物を買って、
それを飲んだとか言っていて・・・・
それを「捨てたとおんなじ」だとか。

松本 ダメですね〜。
糸井 それ、答案として最悪ですよね?
松本 そうですよね。
糸井 だったら、捨てられませんでした、のほうが
どきどきしているという意味では、
点数が高いでしょう?

その授業をやっていて、つくづく思ったのは、
女の突破力というか、約束というものに対して
「破る可能性がある」と思って生きているのが
女という種族なんだよなあ、というか・・・。
それがわかって、おもしろかったですよ。

松本 それはおもしろいですけど、
それをさせようとした発想が、
ぼくにはいちばんおもしろいですね。


(つづきます)

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