なぜ開高健とつき合わなくなり、むしろ避けるようになったか、というと、ベトナムとかノン・ポリだけではなく、やはりソウウツ気質ということがある。(中略)
わたしもこれの激烈なのに二度罹り、もっぱらクスリで治したが、開高健はウイスキーで一日一日を「うっちゃった」らしく、それではカラダをこわしてしまう。
ある夜、彼は新宿からの帰途、上機嫌で、「オレの家へ来い」と言う。ところが自分の家の入り口が見えたとたんに、機嫌は激変し、コワイ眼をして黙りこみ、家に入ると自分の部屋にこもってしまった。冨士真奈美と二人でコタツで話したのは、この夜だったかも知れない。牧羊子が困った顔で何か呟いたようでもあったが……。
たしかその頃から、会わなくなり、やがて開高健は太ってきた。
ソウウツとソウウツでは所詮、ツキ合いは無理であった。ソウウツの相手は分裂気質かテンカン質の人に限ると思う。飯島耕一「三十歳のまだ痩せていた彼と」
平成2年7月
via meiii.tumblr.com
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