巨額の公的資金投入を受けたAIGの、その実質破綻の原因を
つくった金融子会社の幹部に対する高額賞与支給の発覚で、米オ
バマ政権が揺れています。そのことを事前にバーナンキFRB議
長とガイトナー財務長官が知っていたというのです。
とくにガイトナー財務長官は、長官就任前、AIGを直接監視
する立場のニューヨーク連銀の総裁だったので、今後オバマ政権
にとってガイトナー財務長官の存在が相当重荷になるという見方
が出ています。
2008年の大統領選では別に若者や黒人が黒人大統領を選ん
だわけではないのです。共和党の伝統的な支持者が支持したから
オバマ氏はホワイトハウスに入ることができたのです。どうして
彼らはオバマ氏を支持したのでしょうか。
彼らは、不正を働いたウォール街に対して大変な怒りを持って
いるのです。そのため、「マケインに任せていたのでは、不正の
追及はできない」として、オバマ氏にそれを託したのです。
このことに対して日高義樹氏が面白いことをいっています。日
高氏に対して、米国の日本通の政治評論家が、米国民がオバマ氏
を大統領に選んだ理由を次のようにいっているのです。
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マケインを選ぶのでは、日本でアソウを替えてオザワにするよ
うなものだ。徹底的な追及や粛清は難しい。社民党党首のフク
シマを選べば、責任追及が行われる。アメリカ人はそう考えた
のである。 ——日高義樹著/PHP
『不幸を選択したアメリカ/オバマ大統領で世界はどうなる』
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さて、現在日本では、そのオザワ——民主党の小沢代表の公設
第一秘書である大久保氏の逮捕劇で政局は大揺れです。ところで
ここまで53回にわたって書いてきた今回のテーマについて、今
年の1月5日に私は次のタイトルを付けたのです。
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大恐慌後の世界はどのようになっていくか
− 日本はそれにどう対応すべきか −
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しかし、ここまで日本の対応については、まったく触れており
ません。それは、今回の未曽有の経済危機に対して、現在の日本
政府のあまりにも稚拙な対応に対して内心呆れているからです。
それにしても、この突然の大久保第一秘書の逮捕については大
きな疑問があります。新聞や週刊誌でいろいろ書かれていますが
明日24日に大久保秘書が起訴されるかどうかが決まるというこ
となので、EJでもその問題について少し言及してみたいと思い
ます。マスコミがあまり触れていない点に焦点を当てて書くこと
にします。
最初に明確にしておきたいのは、現在の政治資金規正法という
法律は、企業献金を禁止するという目的から見た場合、完全なザ
ル法であるということです。なぜなら、企業から政治家への直接
的な献金は禁止しているものの、政治団体からの献金は政治資金
収支報告書に記載している限り認められるからです。
この場合、マスコミの報道ではほとんど触れられていない——
意図的に触れていない疑いもある——ことは、この法律では寄付
の資金を誰が出したか——つまり、本当の出資者については報告
書に記載する必要はないということです。つまり、法律はそこま
で求めていないということです。
小沢代表の場合、西松建設のOBが設立した2つの政治団体が
寄付者として政治資金収支報告書に記載されており、このこと自
体は別に違反ではないのです。新聞やテレビに登場する弁護士や
コメンテータでこの点を強調している人は、元検事で、現在桐蔭
横浜大学法科大学院教授の郷原信郎弁護士だけなのです。郷原氏
は次のようにいっています。
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小沢氏の秘書が、西松建設が出したお金だと知っていながら政
治団体の寄附と記載したとしても、それだけでは違反とは言え
ない。報道では、小沢氏の秘書が西松建設に請求書を送り、献
金額まで指示していたとされていますが、それでもただちに違
反とはならないのです。 ——郷原信郎弁護士
——『週刊朝日』3月/20日号より
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郷原氏が指摘している小沢事務所が西松建設に出したとされる
請求書の存在——検察側のリークと思われる情報によって、新聞
やテレビが一斉に報道しているのですが、これは後で2つの政治
団体宛ての請求書であったことが明らかになっています。
しかし、一般の国民としては、西松建設宛ての請求書であると
誰でも思ってしまいます。こんなことは家宅捜査で書類を押収し
た検察でなければ知り得ないことであり、明らかに検察側の虚偽
のリークとしてか考えられません。
もうひとつ引っかかるのは、テレビに登場する元検事の解説者
は、ほとんど検察寄りの主張をしており、今回の検察捜査に批判
的な郷原氏は、テレビ朝日/サンデー・プロジェクトのみしか出
てこないことです。明らかにそこには、検察とメディアによる世
論操作の疑いが濃厚であると思います。
それに今回の逮捕容疑が「政治資金収支報告書の虚偽記載罪」
であることです。この罪でいきなり逮捕はあまりにも乱暴です。
しかも、衆議院が迫っている極めて重大な政治的影響が生ずる時
期においてです。
マスコミ報道は、小沢事務所が西松建設と共謀して、2つのダ
ミーの政治団体を作り、そこを通して献金させたという書き方に
なっています。しかし、これら2つの政治団体には政治団体とし
ての実態があり、その団体ができたときには逮捕された大久保氏
は秘書ではなかったのです。そういうこともマスコミは書かず、
何とか小沢潰しをやろうとしています。それでも検察は明日大久
保氏を起訴すると思います。 ——[大恐慌後の世界/53]
≪画像および関連情報≫
●小沢代表の第一公設秘書逮捕についての佐藤優氏の意見
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「検察ファッショではないか」という田原総一朗氏に対して
佐藤優氏は次のように疑義を呈したという。
「検察ファシズムだとすると、事前に新聞やテレビなどのメ
ディアに小沢の陸山会はかくもいかがわしい団体で、いかに
謎が多いかといったことをリークし、一定の世論形成をして
から逮捕を敢行する。さらにバランスを取るために自民党の
何人かの政治家の捜査をほぼ同時に行うはずだ」。
——『週刊朝日』3月/20日号より
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2009年3月23日月曜日
Electronic Journal: ●「小沢事務所への特捜捜査の謎」(EJ第2535号)
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